番外編 響摩そら短編小説 「わだち」
ある日、その行為が奇跡を生むとしたら私はどんなに喜びにあふれ、その行為をひろめることに全力を尽くすだろう。
いつも、見ていたあの空がきょうはとても恐ろしく、そしていつものように光が降りてこないことに私は悲しくなった。
複雑な気持ちであった。
ガシャン!!
大きな物音がした。それは後ろのほうから聞こえてきた。
私はふりかえると、ハッと我にかえった。
みてみると、大きな銅像が倒れていた。何が起きたのか、私にはわからなかった。
ただ、ひとつ気になることは今の瞬間に、私の心は遥かかなたに連れ去られていたことだけだ。それだけは確かにわかった。
何が起きたのか私にはわからないが、これが不吉な始まりであることは確かである。
(三日前・・・。)
「よう!元気にしていたか?」私は友人のカイヤに言った。久しぶりに会った。
「まぁ、ぼちぼちさ。どうだい、一杯やらないかい?」
私は困った。今はアルコールを飲んでいる場合ではないんだが・・・。
カイヤ・エクスペリム。彼は少々、酒飲みだ。頭はよいのだが酒を飲むのに難がある。
カイヤのその頭脳は数々のものを発明してきた。
そのカイヤに私はあることを持ちかけた。この次元とあの次元にある種のエネルギーが存在するとしたら、それはある化学物質と衝突させたら時空のゆがみの足がかりになる反物質からエネルギーを取り込めるかもしれない。カイヤどう思う?そんな質問を私は彼にぶつけていた。
それは数奇な運命の始まりでもあった。この次元は多次元の構造をしており、物理的には二重構造以上の時間軸からできている。簡単にいってしまえば、いくつもの空間が同時に存在する。
その次元を私たちはいじってしまうことになるとは思わずに私は恐ろしい提案をしてしまった。
この課題をクリアするにはある種の呪いのエネルギーが必要になるが、それにともない正気の光のエネルギーが膨大に必要になってくる。考えただけでも私はワクワクしてしまうのだが、このエネルギーがもたらす恩恵は大きい。
すると、カイヤは言った。「ああ、それは思いつかなかった。なるほど。であれば、クリスタルよりも硬い鉱物が必要になる。しかし、その鉱物はまだ発見されていない。理論上は存在するはずなんだがね」
「君の錬金術で、できるのじゃないかね?」カイヤは冗談交じりに言った。「理論上は存在しえるものだ。作れるのじゃないかね?ま、作れたとしてもまがい物だと思われるかもしれないがね」するとカイヤは大声で笑った。
その時、私にあることがひらめいた。いままでになぜ思いつかなかったのだろう。それくらい、私はこの考えが道を開くと喜びに満ちた。確信であった。ただ、それが後に大変な時の変化をもたらすとは思いもしなかった。
わずか数分後、私はカイヤに自分の名前を伏せた上でこのことを学会に発表してよいか聞いていた。むろん、私が連名で考えたということを伏せるためだ。私には確信があった。これは大きく時代が変わるぞ。思いがけず私はその理論を発展させることに成功した。わずかに隙間は残るものの、これなら可能なはずだ。
カイヤはキョトンとしていた。私の名前を伏せて、自分だけが考えたように発表してもよいのだから、カイヤは悪い気はしなかった。
冗談から始まった。この話は後に、大きくこの次元を狂わせていくことになる。
(三日後の現在・・・。)
私は足早に大きな物音のした方向に近寄っていくと、あるものが誕生していた。まさかこれが銅像を倒したとは思えないが、それをひろいあげると私は大きくうなずいた。これだ!これだ!やはり正しかった。しかし、なぜこれが大きな銅像を倒したのかは疑問に思わずに、私は目の前に起きたことだけを見つめていた。
私は歓喜した。大きな喜びに包まれた。お金ではないのだ。この技術こそ必要なのだ。
富の錬金と名づけよう。私はこの発見に大きく貢献したが、名を刻むことはさけようと誓っていた。
しかし、この発見は私の人生を大きく狂わすことになる。いや、狂わすことになるところだった。私が何をしたのか。その多くは謎に包まれることになる。世紀の発見ではあるが、その発見は大いなる神々の法則を無視しているとして政府の特殊な管理下におかれた。
この大いなる記録を君はどうとらえるかわからないが、物語として君の心に残れば、私はうれしいと思う。私の名はサイヤング。アルベルト・サイヤングという。
(続くのだろうか・・・笑)
by響摩そら
(Hibima Sora)
響摩そらの小説について。
ほんとうに大切なものを教えてくれる
不思議で温かな物語
心を閉ざしていたコースケは
ハルカに連れられて高台の広葉樹のもとへ
秘密の箱
記憶
キーホルダー
目覚め
人生において大切なことは
人によって違うかもしれない
しかし、この、ささいでも大切なことが
奇跡を起こし人生に希望を与えるのだと
私は信じたい
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著者プロフィール(響摩そら)
1978年02月26日生まれ、群馬県出身。
2歳半の頃、重度の肺炎を患い右耳の聴力を失い、左耳に残ったわずかな聴力を補聴器で補う。
聴覚のハンデを負いながらも、小、中、高と普通クラスに進学、卒業。
その後、農業専門校へ進むも中退。
心の病、ひきこもり、フリーターを経て職につくも、聴覚障害による業務などのコミュニケーションの壁にぶつかり挫折。
自分自身の進むべき道や障害を持つ者としての在り方を問うなか、あとりえBirdplanning.comを立ち上げ、のちにあとりえひびまそらと改名し今日に至る。